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2022年 09月 22日
『龍宮之使』特別上映&トークイベントinネオ書房
『龍宮之使』の詳細については公式サイトへ。

2022年9月18日、阿佐ヶ谷ネオ書房にて、ようやく「龍宮之使」を拝見することができました。感無量。思い残すことがひとつ減ったので、またどこかで観る機会がありますように。

2018年11月の「クトゥルー復活祭」で予告編とパイロット版を目の当たりにしてから4年、翌2019年の本編完成から3年、大阪、東京で何度か上映され、そのうち何度かは近くにいるも別のイベントと重なるという都合のつかなさには驚くばかり。その間、ボディーアートのちえこさんから、ウボ=サスラ役のKAORINさんから、美術の中尾小風さんから、表話から裏話まで聞き及んでいたので、もう呪われているのではないかとすら感じる日々でした。

そんな前置きはさておき、上映開始早々、美しい波打ち際と重厚で悲しげな音楽から実に印象的。インスマスといえば魚臭く不潔で陰鬱なものですが、本作は全編にわたって美しい背景と舞台で、人の心に巣くう醜悪さとそれによって引き起こされる邪神の脅威が繰り広げられます。何しろその邪神すら、悍ましさは控えめであり、美しさとエロティシズムの塊なのですから!邪神を演じられたロウズさんたち、皆さん普段のままで邪神でした。紳士的な邪神の皆さん、素敵です。笑顔を絶やさず物静かなブルーさんは、とても紳士的なのがかえって怖かったですね。

予告編ではみんな良い人という印象でしたが、冒頭でマーティを助けた漁師がお金を受け取っていたことから、その印象が音を立てて崩れ落ちました。これは良い意味で大きく裏切られましたね。この、予告編で受けた印象とのギャップはその後も続き、病院だと思っていたところが実は詳細不明な研究所、災難に遭ってかわいそうだなと思わせられたマーティーがけっこうなろくでなし、温厚そうに見えて些細なことで声を荒げるアガミ、オリス教授は…予告編でも善人ではなかったか! 実は、オリス教授にはカリガリ博士が重なって見えていたので、本作で最も良識人ではないかと思っていたのです。が、なかなかに悪い人でしたね、しかも多くの人に慕われていましたね、この表裏の大きなギャップがいいですね。

そして何より、主人公であるマーティ、アガミ、オリス教授の、玉手箱を巡る三人三様の破滅への道が素晴らしい。玉手箱の秘密を偶然知ってしまったマーティーは、いかにも人間らしい欲望によって、本来の玉手箱の所有者でありとても純真なアガミは、その純真さゆえに、玉手箱を横取りし地位と名誉を求めたオリス教授は、より大きな地位と名誉が転がり込んできたのだが…。クトゥルー神話といえば、異端の碩学と度を超した探求者が活躍しますが、アガミとオリス教授がそれに当てはまります。さて、マーティーはといえば、これはもう「インスマウスの影」の“私”でしょう。あのラストは玉手箱によるものなのか、はたまた自らの出自にあるのか、そんな考察も楽しく、謎は深まります。

この、謎を明らかにしない部分は、キャラクターにも映像にもちりばめられていて、これらをどう捉えてどう考えるかによって、設定が変わり、見た人の中に「龍宮之使」が形作られるのでしょう。というのは、上映後に浅尾さんに伺ったお話。

ちょっと思い返すだけでも、語りたいことが山のように出てきます。SLはラヴクラフト作品映画の「襲い狂う呪い」でも印象的でしたし、夕暮れの鉄橋は銀河鉄道の夜を想起させられ、両作品ともSLは異界との架け橋であることから、印須磨はやっぱり異界なんだなぁ、とか。オリスメンチカツは「帝都大戦」の美緒虫っぽくて楽しかった、とか。極めつけは、大きな声では言えませんが、2つのラストシーンには声を上げて泣きたくなりました。が、大人なのでそっと涙をぬぐうに留めました。これはもう念願叶って本作を観ることができたというのが大きいでしょうけど、繰り返しになりますが、小さな欲望と大きな力に翻弄されたマーティー、乙姫への思いを貫くも念願叶わなかったアガミ、

を得て上り詰めたかに見えたオリス教授、この三人三様の破滅の末路に加え、一つ目のラストシーンでは多くを語ることなく静かに退場する一之谷博士の存在感、二つ目のラストシーンではこの物語は延々と繰り返されるのではないかという驚きでもあり無力感でもあるなんともいえない衝撃、久々に全身が総毛立ちました。

いやぁ、ラヴクラフト&クトゥルー映画はそこそこ観てきたつもりだけど、感動して泣いたのは初めてだ!
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# by cthulhu_dune | 2022-09-22 13:23
2021年 06月 07日
360度VR WEBギャラリー
感染症下で開催された2020年の幻獣神話展は想像していたよりもずっと盛況でしたが、来場をためらわれるお客様も多かったため、さっさとリコーのTHETAを買って360度VRによるバーチャルギャラリーを作ればよかったなと思いました。

そこで、試しに中古で非常に安価になっていたTHETA Sを入手して遊んでみたのですが、WEBギャラリーで使うには解像度が低すぎたのでどうしたものかと悶々とする日々。

容量アップ版Z1が出たところで、プレミアまでついていた中古の初代Z1が定価以下で出回り始めたので、勢い余って入手。

Z1の解像度にスマパノの画像埋め込みを併用すれば、WEBギャラリーとしてなんとか使えるレベルになりました。

さっそくACG_Labo様と+ノーションギャラリー様にお願いして、WEBギャラリーを作らせていただきました。




スマホでは、下のメニューの左から3つ目の地球ごまみたいなアイコンをタップしていただくことで、スマホを動かしてご覧いただけるVRモードがお使いいただけます。
また、下のメニューの左から4つ目の眼鏡アイコンをタップしていただき、VRゴーグルをお使いいただくとより臨場感を味わえます。その際、中央のクロスマークをアイコンにあわせると作品がポップアップ表示されます。

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…ブログでの禁止タグがきびしくなっているので、フレームやオブジェクトタグでVR表示の埋め込みができないですね。エキサイトではかろうじてリンク先を大きく表示できるのですが、残念です。また、WordPressでもiframeが使えないことがあるようなので、埋め込み表示していただける作り方が限られてしまいます(´Д`)


# by cthulhu_dune | 2021-06-07 09:41 | イベント
2018年 05月 22日
忌まれし扉劇場「インスマウスの影」
昨夜は四谷三丁目、喫茶茶会記「哲学者の薔薇園」で開催された、忌まれし扉劇場「インスマウスの影」を観劇してきました。
朗読するにはかなり長いと思われるこの作品、どんな具合に仕上げるのかとても楽しみでしたが、話すと長くなる部分をバッサリと切り落とし、緩急それぞれの頂点を見事にまとめ上げた翻案短縮版!

旅費をケチったがためにインスマウスを訪れることになった「起」、バスの乗り換え時間の間にインスマウスとマーシュ家の歴史を知ることになる「承」、バスが動かず図らずも恐ろしい一夜を過ごすことになってしまった「転」、難を逃れたものの自身の血がその災禍の中心に帰結していく「結」。

インスマス面の「私」に扮したチェリー木下さんの朗読、ダゴン秘密教団の司祭に扮した永井幽蘭さんのピアノと歌が、時に寂しげに、時に情熱的に物語を紡ぎ出し、締めくくりは人魚姫になぞらえたインスマウスの歌。興奮と恐怖の絶頂で、まるで断崖絶壁から突き落とされたがごとくには幕を下ろします。

表現手法で特筆すべきは、有名な「フン グル イ・ムグルウナフー〜」の発音。つぶれたのどから絞り出すようにして発声され、あたかも深きものどもの声音であるかのように聞こえます。バスの運転手ジョー・サージェントも、しわがれたというより絞り出すような声音でしたね。嫌悪感がマシマシです。

また、原作とは異なる表現や言い回しもありましたが、それはそれでとても効果的。特に、インスマウスの影を象徴する呪われた血脈を「血は運命に流れる」と繰り返し叫んでして締めるあたりは、異形へと身を変え狂気に落ちてゆく「私」の激情を強く感じ、鳥肌が立つとともに涙が出てしまいました。これ、映画ではよく見ているんですが、やはり目のまでで繰り広げられる生の迫力は違いますね。

映像作品と比べるのはあまり意味のないことですが、「インスマウスの影」を主題にした映像作品はおそらく3本で「インスマスを覆う影」「Return to Innsmouth」「DAGON」、ビジュアル化としてはこれらに勝るとも劣らず、ラヴクラフト映画全般と比べてもこれほど見応えのあるものは滅多にありません。

本作のサウンドトラックが出ないかな。「インスマウスの歌」はまた聞きたいですね、というか本作の再演を希望しますし、次回の忌まれし扉劇場も観劇したいですね!

チェリー木下さんの「怪奇幻想クラブ・渦とチェリー」、忌まれし扉劇場「インスマウスの影」の記事



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# by cthulhu_dune | 2018-05-22 16:10 | Lovecraft Cthulhu 映画