2007年 06月 01日
キネマ・コラボレーション『オペラの怪人』
キネマ・コラボレーション『オペラの怪人』
5月6日 東京芸術劇場

ひと月前の記憶をたどりつつ書いているので、おかしな点があってもご容赦を。

なりたての喘息を薬で抑えつつ、雨降りの池袋へ。
蛇の道をゆくは蛇、怪奇幻想の道をゆくは怪人、普段お世話になっている方をお誘いしての『オペラの怪人』。
フィルムはもちろん1925年ロン・チャニー版、これに活弁と生演奏とあっては、古典怪奇幻想映画好きの目に留めておかなければなりますまい。
弁士は、まさしくオペラ座に集う貴婦人のごとき装いの斎藤裕子氏。
ピアノは、菜の花のごときドレスをまとった三沢治美嬢…あのひと美人だねーとは同席した女性たちの声(笑)…。
歌劇の殿堂たるオペラ座を舞台にしたこの無声映画、いかように語り奏でるのか楽しみ楽しみ。

三沢嬢オリジナルの劇伴は、喜怒哀楽にコメディーシリアス、スクリーンよりも出過ぎず引き過ぎず、雰囲気たっぷりの楽曲が弾かれます。
曲調は、私の耳にはクラシックとジャズの融合した、いわばフュージョンといったおもむきかな。
さて、出色は『ファウスト』のソロのシーン、ここで三沢嬢はスキャットという見事な演出をやってのけます。
しかしそこは劇伴、役者を変えて2度あるこのシーンを、まったく同じ抑揚で奏でることで、歌ではなく劇伴としての妙となっているのです、
これ、もしもカルロッタとクリスティーナで変えてしまっていたら、歌っているのか思わせられるところ。
それではアフレコになってしまい、劇伴とは異なるものになってしまいます。
歌劇のシーンをどのように魅せるのか、私にとっての大きな楽しみは、かくのごとき見事な演出でありました。
ところで、ほんの少しだけ有名すぎるウェバー版を取り入れているように聞こえましたが、それはほんとにわずかなパートだけ。
それも、冒頭と終盤だけじゃなかったかな。

さて、もう一翼を担うというか、こちらがメインといえばメインの、活弁。
斎藤嬢の特徴たる、スクリーンの中から語りかける名調子は、もちろん健在。
ヒロインの悲哀に、鬼気迫る女性の悲鳴にかけても、銀幕と弁士、どちらに目をやろうか迷ってしまうほどの動きは、毎度ながらユニークで秀逸。
あまり大きな動きのない活弁士ですが、斎藤嬢はけっこう動いているのです。
ゆえに、弁士とスクリーンの両方が、あまり視線を動かさずに見られるような席を取るとよろしいかと。
余談はさておき、今回もヒロインの見事さ…は、意地が悪いようだけど実は当たり前。
だって、主役の演出がヘタッピだったら、もう目も当てられませんもの。
なので、安心して脇役の所行に目をやれるのも、さらなる楽しみ。
中でもささやかなコメディーリリーフのひとりである、カルロッタの母ちゃん、何とも生き生きと嬉々としていることか。
実は、本作でけっこう好きな役どころが、この娘一筋のバカ親。
もっとも、チャニー版『オペラの怪人』は、今の目から見ればコミカルなシーンが多いので、ふつうに見ていても笑えてしまうんですけどね。
メインキャストを大きくいじるのは好ましくないでしょうが、脇役や端役にちょっとした演出を加えることで、活気溢れる臨場感もさることながら、主役たちも引きたれられているのですなぁ。
もちろん、怪人エリックも言うに及ばず、ですぞ。

公演後、気分が体調を上回ってしまったので、お食事とおちゃけに同席した私は、翌日喘息の症状が悪化して果ててしまったのでありましたとさ。
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by cthulhu_dune | 2007-06-01 16:55 | 映画・映像


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