2008年 01月 07日
キネマ・コラボレーション『第七天国』
キネマ・コラボレーション『第七天国』
2008年1月6日 東京芸術劇場に於いて

チムチムニー♪チムチムニー♪チムチムチェリー♪は、「メリー・ポピンズ」の煙突掃除屋さん。

時と所は変わって、1914年のフランス。
後年、東洋の果てでヒットする『上を向いて歩こう』を先取りしたかのような鼻歌を口ずさむのは、下水掃除夫のチコ。
イタリアからパリに移り住んだ彼は、貧しくともいつも上を向いて生きていく、自称すごいヤツ。
そんな彼の元へと転がり落ちてきたのは、薄幸の娘、ディアンヌ。
不誠実な姉とのいさかいから危うく落命しかけた彼女を救ったチコだったが、行きがかり上やむを得ず彼女との共同生活をする羽目になってしまう。
そんなぎくしゃくとした二人の関係も、時が経つと共に角が取れて丸くなり、いつしか惹かれあっていく二人。
チコがディアンヌとの結婚を決意したその時、第一次大戦の暗い影が忍び寄り、二人の間を引き裂いてしまった。
日増しに激しくなる戦火の中、離ればなれになりつつも、健気に愛をつなぐ二人。
しかし、神を信じ、チコの生還を信じてやまないディアンヌの元に、悲報が届いてしまうのであった…。

悲劇と喜劇を見事に織り交ぜた、1927年作のメロドラマ。
悲劇のままに終わりそうだったので、ヨーロッパの映画かなと思ったりしましたが、アメリカはFOX社のハッピーエンド。

今にも風に吹き飛ばされてしまいそうなジャネット・ゲイナーのヒロインに、ジェームス・ディーンを二回り大きくしたようなチャールズ・ファレルのナイスガイも見事ながら、彼らを取り巻く脇役たちがまた秀逸。
なんてのは名作の常套句ながら、やはり舌を巻かざるを得ない。
戦場でおいしいところをかっさらう、せせこましいラットに、パリに残されたディアンヌたちを愉快に支えるボウル(Boul)と愛車のエロイーズなどなど。
そしてこれに拍車を掛けるのが、弁士・斎藤嬢と、楽士・三沢嬢、というのもキネマ・コラボレーションの常套句か。

今回の活弁の聞き所は、悔しいけれども小粋な脇役ではなく、主役であるチコとディアンヌの掛け合い。
戦火に引き裂かれた二人が同時刻に捧げる祈りの切なさは、ただただ折り重ねるように互いの名を呼び合う、悲しみと慈しみを込めた斎藤嬢の活弁によっていや増しに増し、いやがおうにも胸を締め付けられてしまう。

そして、このロマンティックなシーンと交互に訪れる戦火に奏でられるのが、激しく重苦しい、クラシックとジャズロックの融合ともいえそうな劇伴。
三沢嬢が弾き出す、まるでダブルバスの連打にも似た強烈な重低音のビートが、ここが戦争のまっただ中であることを観客に思い知らせるのだ。

この、弁士と楽士のコントラストこそが、キネマ・コラボレーションの醍醐味。

気っ風のいい斎藤さんが紡ぎ出す、ヒロインと毒婦のコントラスト。
華奢で可憐な三沢さんが弾き出す、重厚さと軽快さのコントラスト。
お二人の和と相乗効果が生み出す、緩急自在で多彩なコントラスト。

一期一会のステージなれど、ぜひとも音源、あるいは映像として残して欲しいものですなぁ。
とまあ常套句をたたみ込んでしまったところで、キネ・コラ『第七天国』のレビュー全巻のおしまいであります~。
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by cthulhu_dune | 2008-01-07 15:29 | 映画・映像


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