2017年 07月 19日
7月18日に新宿ライブワイヤーにて行われた、操觚の会トークショー「歴史時代作家の最前線」に行ってきました。平日夜なのでひょっとしたらすいているかなと思いましたが、なんと満員御礼の大入り!直木賞候補の木下昌輝先生効果も要因だと思いますが、普段は活字でしか知らない作家にお会いできるというのはとても貴重な機会ですね。 今回は「作家に何でも聞いてみよう」と題し、来場者との対話を楽しむ形式。飛び交った実名が突然伏せ字になって、来場者はワクワク、関係者はたぶんドキドキの場面もあり、実に興味深い内容。以下、かなりはしょったレポートです。 鈴木英治局長 秋山香乃さんとの主従関係、でもとても仲良し…。最近飛ばしている鈴木先生のお話は楽しい。 ヒット作を出すためには、とにかく書き続けること。シリーズが続くと、ある日突然右肩上がりになる(こともある)。 一日に書いた最高枚数は140枚! 面白い小説はキャラクター作りが重要。読者はキャラクターに会うためにリピーターになる。キャラクター作りに関しては、菊地秀行先生と小池一夫先生の対談で同様のことをおっしゃっていました。 早見俊副隊長 徹底的に力を込めた作品よりも、肩の力を抜いた作品のほうが受けがいい。 編集からもプロットを求められなかったり、ご自身もプロットを書かずに本編を書き始めることが多い。 早見さんが出版社から求められる時代劇は、勧善懲悪でエログロなし。 個人的に「若さま十兵衛」で妙に死人が多いと感じたので、ひょっとしてこれまでの路線から変わったものを書かれるのかな?とダークヒーローものについて質問しましたが、書いてみたけど落とされた、書きたいけど書かせてもらえない、とのこと。出版社としても作家ごとに色合いを分けているのでしょうけど、早見さんのダークサイド時代劇、読んでみたいですね。早見さんらしい善の色の強いキャラクターを一転させる、例えば毒をもって毒を制する柳生十兵衛とか。 新美健先生 ゲームのノベライズが下火になった頃、執筆関係の仕事がいくつか動き出して小説家としていけるんじゃないかと感じた。 デビュー作が特別賞10万円コースなので、鈴木英二局長の後輩。 賞の選考では、推薦してくれる選考委員の力がなんとかかんとか…。 木下昌輝先生 直木賞発表前夜!確率は(候補が5作あるので)20%!お話の多くは直木賞関連でしたので割愛。 テーマをひとつ決めてメインとなる短編を書き、そこから話を広げていく。作品のテーマの決め方や、情報収集のひとつにカルチャースクールがある。 武蔵の場合は、DTPスクールで知った吉岡憲法が原点となる「憲法黒」がきっかけだった。しかし、武蔵の資料は信憑性の高いものが少なく、また自己顕示欲の強いものが多いためにとっかかりとなる作品を生むのに難儀した。 マイナーな主人公かもしれないが、お祭りがあるものは年に一度は必ず話題になるので、長く読み継がれるかもしれない。「天下一の軽口男」の米沢彦八、「絵金、闇を塗る」の弘瀬金蔵とか。 尊敬する先達はいるが、木下さんとしては星新一のような何でもありの作品を書きたいとのこと。 若い人達に時代小説を読んでもらうことに関しては、高校生直木賞が有意義であり、意外な視点で読んでいることに気がつく良い機会だった。こちらに関しては、「宇喜多の捨て嫁」巻末に収録されています。 期待された強敵と書いて友と呼ぶ谷津矢車さんとの対決は、剣ではなく筆(口とも言う)で、俺の分野に入ってくるんじゃねぇとか、次は何を書くんだとか、まだまだ手の内を探るつばぜり合いでした。 おいらは「人魚ノ肉」が大好きなので、今後もこのような伝奇、ファンタジーに振った作品を書かれる可能性はあるのか訪ねたところ、もちろん書きたいし、書くつもりとのこと。 また、フィクションとノンフィクションのボーダーライン、虚の部分を作る上でこれ以上はやってはいけないとしているところがあるのかとの問いには、意外にも、史実をしっかり押さえたうえで、後は自由に想像して描くそうです。ただし、見破られにくいところで史実の中に虚を盛り込むことがあるのでおたのしみに!とのことですが、おいらじゃ見破れないぞ。 登壇される先生方のトークもさることながら、軽妙洒脱で打てば響く誉田龍一さんの司会がめっぽう面白いのが、操觚の会トークショーの大きな魅力。汗をいっぱいかきながら盛り上げる誉田さんも応援しよう! 以降の操觚の会は、9月と11月です。
by cthulhu_dune
| 2017-07-19 16:28
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